大阪地方裁判所 昭和48年(わ)818号 判決 1973年8月15日
本籍
堺市翁橋町二丁目一八〇番地
住居
堺市一条通一一番三一号
パチンコ遊技場経営
清水敏夫
大正一五年一月二二日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官浅井敞、弁護人田辺光夫各出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一〇月および罰金九〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、昭和二六年頃堺市一条通一番二一号にパチンコ遊技場「優勝ホール堺店」を、同三六年頃大阪市阿倍野区昭和町五丁目一二番二六号にパチンコ遊技場「優勝ホール大阪店」を、それぞれ開業し、これらを経営して今日に至っているものであるが、事業拡張資金の備蓄、 外交際費の捻出等のために自已の所得税を免れようと考えて、
第一 昭和四四年分の所得金額が三〇七二万一八三一円で、これに対する所得税額が一五五一万三一〇〇円であるのにかかわらず、公表経理上売上げの一部を除外し、架空名義預金口座に預け入れるなどの行為により、所得の一部を秘匿したうえ、昭和四五年三月一六日堺市堺税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が一〇六四万五五三八円でこれに対する所得税額が三九六万二九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により所得税一一五五万二〇〇円を免れ、
第二 昭和四五年分の所得金額が四六四〇万八三四四円で、これに対する所得税額が二四九八万八九〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により、所得の一部を秘匿したうえ、昭和四六年三月一二日前記堺税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が一一七九万三五二三円で、これに対する所得税額が四二五万七八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、所得税二〇七三万一一〇〇円を免れ、
第三 昭和四六年分の所得金額が三一一〇万七九八七円で、これに対する所得税額が一四九六万四三〇〇円でこれに対する所得税額が一四九六万四三〇〇円であるのにかかわらず、前同様の行為により、所得の一部を秘匿したうえ、昭和四七年三月一四日前記堺税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が一四〇五万三三九七円で、これに対する所得税額が五〇七万一四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、所得税九八九万二九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
(注) 47・12・1は昭和四七年一二月一日付の意味である。
判示全事実につき、
一、 被告人の当公判廷における供述
一、 大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書(47・8・29)
一、 被告人の検察官に対する供述調書(48・3・6)
右のほか、
判示第一ないし第三の各事実につき
一、 大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書(47・12・19・48・1・27・48・2・2・48・2・21)
一、 被告人の検察官に対する供述調書(48・3・8)
一、 次の者の作成した確認書
中村郁三、井口啓三、竹中正二郎、(47・8・28二通)井内博見(三通、検察官請求証拠目録請求番号131415のもの)、猪里重雄、金島清剛
一、 次の者の作成した照会回答書
税理士中居朝夫、片山輝昭、大阪府阿倍野府税事務所、大阪府堺府税事務所、株式会社高島屋(堺市在)、奈良県山辺郡山添村長(藤村桂造)、堺市財政局税務部固定資産税課、明治生命保険相互会社大阪総局、千代田生命保険相互会社大阪事務センター、安井生命保険相互会社、日本生命保険相互会社、平和工業株式会社、株式会社三共(毒島邦雄)
一、 大蔵事務官高橋芳広作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書
一、 査察官藤岡正作成の調査報告書(たな卸関係)同人作成の調査書類(源泉所得税関係)、同高橋芳広一名作成の調査書類(元帳と決算計上金額との関連関係)、同福崎敬学外二名作成の調査書類(調査元帳)、同人作成の調査報告書(銀行調査関係二綴)、同人作成の調査報告書(配当金関係等)、同人作成の調査報告書(所得税納付関係)
判示第一の事実につき、
一、 大蔵事務官作成の被告人に対する質問てん末書(47・12・22)
一、 大蔵事務官作成の井山幸次郎、細谷竹士、山下利雄に対する各質問てん末書
一、 井上幸次郎(大和観光開発株式会社)、竹中正二郎(47・11・1二通)、井内博見(検察官請求証拠目録請求番号16のもの)、馬場種治各作成の各確認書
一、 藤田トラベルサービス作成の照会回答書
一、 馬場種治作成の供述書
一、 大蔵事務官作成の細谷竹士、田原克人(二通)に対する各質問てん末書
一、 株式会社近鉄百貨店、同和火災海上保険株式会社大阪支店(若尾周)、住友生命保険相互会社、大阪地方貯金局各作成の各照会回答書
一、 田原克人外一名作成の供述書
一、 堺税務署長認証の所得税申告書写(昭和四六年分)
一、 大蔵事務官山川渥生、同岡山栄雄、同小池喜芳各作成の各現金預金有価証券等現在高検査てん末書
一、 査察官川崎典昭外一名作成の調査書類(減価償却関係等)同福崎敬学作成の調査報告書(源泉所得税関係)
(法令の適用)
被告人の判示各所為はいずれも所得税法第二三八条第一項に該当するので所定刑中いずれも懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑につき同法第四七条本文、第一〇条により犯状の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑につき同法第四八条第二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で、被告人を懲役一〇月および罰金九〇〇万円に処することとし、右罰金を完納することができないときは同法第一八条により金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、情状により同法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役の執行を猶予することとする。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 堀内信明)
右は謄本である。
昭和四八年九月一七日
大阪地方裁判所第一二刑事部四係
裁判書記官 槌屋喜久夫